キコニア作中内では、ストレスや多重人格など心理学と関連が深い内容が示されている。
作中内に関連すると思われる知識をまとめると共に、先日(2020/9/19)キコニアDiscordにて共有した資料を添付する。
一般的にストレスと総称されるものには原因と結果が混在している(ストレス・モデル:Lazarus & Folkman, 1984)。原因はストレッサー、結果はストレス反応と呼ばれる。
多重人格は、現実にはPhase1内で呼ばれていた「後天的多重人格」しか存在しない。これは2020年現在「解離性同一性障害(DSM-5)」と呼ばれている。
主症状は「解離」=ストレスフルな経験を忘れることで精神を守る防衛機制(うみねこで八城十八が自分の出自を忘れたのも解離性健忘という解離による疾患の一種)。
解離は主人格がストレスフルな経験を忘れるために生じる反応であることから、主人格は切り離された別人格の存在を知覚できない。また、一般的に情報処理能力が低下する。解離性同一性障害において、人格同士の協力を必須とする並列思考は不可能である。即ち、「解離性同一性障害になることでガントレットナイトの適性を高められる可能性」は極めて低いと考えられる。
人格同士の協力がおこなえるCPPは、「後天的多重人格」とはメカニズムがまったく違うものである可能性が高い。現状では、何らかのSF的技術により発生している現象である可能性も否定しきれない。「たまたま同じ身体を使っているだけのまったくの別人」であれば行動の一貫性が保証されない。
ただ、CPPに関する説明にはソースの不確かなものも多く、大きな誤魔化しが混入している可能性も高い。
参考:AOUは重婚禁止
全登場人物の中で唯一「CPPではない」と明示されているジェイデン。
記憶の欠如など解離性同一性障害を示す描写もない。
ジェイデンはキコニアPhase1において非常に貴重な、高確率で単一人格者であることが保証されている人物と言える。
ただ、
とも明言されており、彼の脳が特異であることは既に開示されている。
単一人格者の行動に不可解な点がみられる場合は人格の切り替えなどではなく何らかの別の要因に拠るはずである。
Phase1の情報をまとめた結果、ジェイデンは「アレキシサイミア」という脳の疾患に近い特異性をもっている可能性が高いことが示唆された。
ジェイデンが肉体を失った場合、痛覚を感じられない無痛症患者が目隠しをされた状態で刃物で滅多刺しにされるのと似たようなことがメンタル面で起こる可能性がある。
なお、ジェイデンに関して解釈を掘り下げることが重要である可能性が高いという点に関しては、先日(2020/9/19)キコニアDiscordにて共有した資料に更に詳しく記載している。
参考:肉体フリーはストレスフリーか?
(※ひぐらし・うみねこの核心に関するネタバレを含みます。ご注意ください)
Hogeveen, J., Bird, G., Chau, A., Krueger, F., & Grafman, J. (2016). Acquired alexithymia following damage to the anterior insula. Neuropsychologia, 82, 142-148.
乾敏郎(2018).感情とはそもそも何なのか:現代科学で読み解く感情のしくみと障害.京都:ミネルヴァ書房.
Lazarus, R. S., & Folkman, S.(1984).Stress, appraisal, and coping. NY: Springer Publishing Company.
三輪高喜(2015).嗅覚の低下が思わぬ災いをもたらす. ファルマシア, 51(2), 125-129.